2015/06/11 Category : 雑記帖 羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く 三月初めの、とある日、愛車を洗車していたときのこと。前輪のタイヤを洗い始めたところ、アルミホイールのナットが1つ緩んでいることに気付きました。あれっ?先週、前後のタイヤを入れ替えたときに締め忘れたのかな?咄嗟に、私はそう思いました。よくよく見ると、5穴のナットのうち1つは緩み始めていて、もう1つは外れる寸前まで緩んでいました。さらに呆れたことに、5つあるはずのナットが4つしかなかったのです!つまり、前輪の片側は4つのナットで、しかもホイールがゆるゆる?の状態で、そのときまで気付かずに走っていたということになります。私は、その光景を思い浮かべてゾッとすると同時に、誰かにイタズラでもされたのだろうか?と思いました。でも、このことろ、そんな…不逞の輩が集うような処に駐車した覚えもないし。思い返すと、その日からちょうど一週間前、私は自ら前後のタイヤローテーションをしたばかりでした。ただ、その日は二月末のおそろしく寒い日で、早めに済ませてしまおうと、私はいつもより手際よくやっつけたのです。まさか…、ナットを締め忘れたか…、いいや、そんなはずはない!私は、過去ずっとそうしてきたとおり【たすきがけ】の要領で確実にナットを締めたことを思い出しました。洗車したあとはちょっと近場まで出かける予定でした。とりあえず何とかしなきゃ…、私は思いました。車載のレンチで残る4つのナットを増し締めしてから、私はツールボックスを開けて、代わりに使えそうなナットがないものか探してみました。でも、タイヤホイールのナットなんてあるはずもなく、取り急ぎ知り合いのモータースの店主に電話をかけてみました。店主いわく、「純正ホイールのナットは持ってないねぇ、ディラーに行けば安く売ってくれるはずだけど…」私は、いつも親身なはずの店主の思いのほかそっけない反応に、アテが外れたと思いました。そして、「へ~、修理工場を構えているモータースにさえないんだから、オレのケチくさいツールボックスの中になんぞあるはずねえな…」 そう思いました。私は、出かけるついでに近在のディーラーに寄ってみることにしました。私は車検も整備もすべて知己のモータースに任せているので、そのディーラーを訪ねるのは初めてのことでした。受付というか窓口には、ふだんはご当地アイドルでもやってるんじゃなかろうか?と思えるくらい容姿端麗な女子がいて、笑顔で応対してくれました。しかし、PCで調べると純正ホイール用のナットの在庫は持っていないらしく、取り寄せになるようなことを言われました。「あっ、でも、ご自身でパーツ販売に行かれるのであればすぐに手に入ると思いますよ。ただ、車検証の提示が必要ですが、行ってみますか?」ディーラのパーツ販売会社は、そこからクルマで5分くらいのところにありました。私は早速行ってみることにしました。住所を教えてもらったパーツ販売会社に着いてみると、そこはいわば同業者のための問屋みたいなところで、一般客などはひとりも見当たらず、ディーラーと比べると妙に質素で時代遅れなオフィスに5人~6人くらいの社員らしきが働いていました。「いらっしゃいませ、どうされましたか?」私は、「いつの間にかホイールのナットが1つなくなった」と言うのもバツが悪いので、今しがたタイヤローテーションしてる最中に1つ紛れてしまったらしい…などと伝え、容姿端麗女子から言われたとおり車検証を提示しました。店員?は、私の車のホイールナットが確かに1つ欠けているのを自身の目で確認すると、PCの画面を観ながら、「ちょうど1個だけ在庫があります」と言ってきました。純正のナット 324円。ステンでもないただの鉄製ナットが324円かぁ、新車なら350万もする車だし、安いと思わなきゃバチが当たるか…。それにしても…、私はその日、この1個324円のナットにずいぶんと翻弄されてしまったような気がしました。というより、私が足かけ三十年に渡って乗り継いできた車は、半年から1年の間に自ら前後輪のローテーションを実行してきましたが、今回のような『ナットが緩む』などというていたらく(不手際)はただの一度も起きなかったのです。それが、妙にショックで、私はセルフで車の整備をすることにすっかり自信をなくしてしまいました。後日、人の解説を聞いたら、「締め忘れでもなくイタズラでもないとしたら、おそらくホイールのセンターがわずかにズレていたのだろう」ということでした。つまり、ホイールのセンターがほんの少しでもズレていると、どんなにしっかりとナットを締めこんだとしても、タイヤが回るうちにホイールのズレが矯正されてナットが緩む…というロジックだそうです。「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」とはよく言ったもので、私はそれからしばらくの間、数日おきにホイールナットの緩みをチェックするハメに…。その名残りというか、余韻というか、今でもトランクルームのすぐ出せるところにタイヤレンチを用意しておき、週に一度はホイールナットの緩みをチェックするよう心掛けています。 (2015.6.11) PR Comment0 Comment Comment Form お名前name タイトルtitle メールアドレスmail address URLurl コメントcomment パスワードpassword