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傘鉾パート2

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10円玉奇譚(きたん)

現行の十円硬貨は、昭和26年から発行されて昭和33年までは「ギザつき」、昭和34年からは「ギザなし」に変わり現在に至っています。
そんなことは、おおよそほとんどの人が知っていると思います。

でも、これからお話することは、ごくごく一部の貨幣コレクターくらいにしか知られていないと思い、この「傘鉾パート2」のトップ記事として採用することにしました。

今からおよそ40年くらいまえの話ですが、当時小学生の私が親に連れられて埼玉の田舎のお祭りに遊びに行っていたある日のこと、田舎の伯父が、私にこう言いました。

「昭和26年の10円玉の鳳凰はメスなんだよ」

そして、伯父は何枚かの昭和26年の10円玉を見せてくれました。

鳳凰がメス?つまり、尻尾が上を向いているからメスなのだそうです。

虫眼鏡で拡大してみると、確かに鳳凰の尻尾は左右とも上を向いていました。同時に、昭和26年以外の10円玉、つまりその頃流通していた昭和30年代~40年あたりの10円玉を虫眼鏡で見てみても鳳凰の尻尾はどれもみな下向きでした。
私は、この事実に驚き、ひどく感心しました。

その頃既に私は、記念切手の収集をしていましたので切手の世界ではよく「エラー印刷もの」があり、それが高値取引の対象になることを知っていましたが貨幣の図柄にも「エラー」があるとは思いませんでした。まして、それがエラーなのか「意図的」なものなのかは謎のままでした。

当時はまだインターネットもありません。
私は自宅の百科事典や学校の図書室などで調べたりもしましたが、「昭和26年の10円玉の鳳凰はメス」などという記事はどこにも出ていませんでした。
詰まるところ、学校の先生に聞いてもクラスのみんなに聞いても誰も知りませんでした。
実際に、昭和26年の10円玉を見せると「へえ~」という子、「見間違えじゃない?」と訝る子、反応はさまざまでしたが、私は何だか「誰も知らないことを自分は知っている」といった気持ちで内心ほくそ笑んだものでした。

そんなことがきっかけで、私は小学生のころから昭和26年の10円玉を見つけるたびに
「とっておく」ことにしたのです。

その当時、つまり昭和40年代以降、まだまだ昭和26年の10円玉はちらほら流通していました。運がよければ年に10枚とか20枚くらいは「発見」できたものです。

そんな調子で一時は昭和26年の10円玉はゆうに100枚以上たまっていました。
特に売りさばくわけでもなく、コレクションとして集めていましたが、10年くらいまえ、私が集めた10円玉を、家人が、私のコレクションとは知らずにほとんど使ってしまったのです。

私はがっくりしました。でも、もともと10円玉ですので被害?額は少なく、気を取り直してまた新たに集めることにしました。

そして、もうその頃には昭和26年はもとより「ギザ」自体がほとんど見かけなくなってきていましたので、今では「ギザ」そのものを見つけ次第確保することにしているわけです。

これを読まれて初めて事実を知った方、もし、つり銭の中に「ギザ」を見つけたら、念のため年号を見てみましょう。もしかしたら、昭和26年かもしれませんよ。

「ギザ」を全部集め始めて気付いたのですが、昭和27年は、尻尾が上向きと下向きと両方あることがわかりました。また、昭和28年以降はいくら探しても尻尾が上向きのものは見つけることが出来ていません。


なお、この話には後日譚があります。

平成10年のことですが、当時私は毎朝「めざましテレビ」を見ていましたが、「めざまし調査隊」というコーナーがあり、そのコーナーに投稿してみたのです。
以下は、そのとき投稿した書式のコピーです。

拝啓 めざまし調査隊 殿

 私は今年40歳になる会社員です。いつも楽しく拝見させて頂いております。
さて,私には下記の如く,以前からずっと気になっていることがあり,是非,貴番組で調査して頂きたくお手紙差し上げた次第です。よろしくお願い申し上げます。
敬具

【主旨】
 現在流通している十円硬貨の表側には平等院鳳凰堂が描かれていますが,昭和26年発行の十円硬貨は,不思議なことに鳳凰の尻尾が上を向いているのです。その実態(時代背景・原因・仕掛け人等)につきご調査願いたく。
以下,詳しく申し上げます。

【十円硬貨の謎】
(1)十円硬貨は,昭和26年から発行され,平成に代わった今でも毎年発行されています。
(2)周知のとおり,昭和26~33年までは縁に(ギザ)があります。巷で言う(ギザジュー)のことですが,現在ではあまり見かけなくなりました。
(3)また,昭和34年からはギザがなくなり銅の材質も変更されましたが,表側の図柄すなわち平等院鳳凰堂の図柄はずっと変更されていません。と、誰もが信じて疑わないはずです。
(4)しかし実は,昭和26年発行の十円硬貨は,平等院鳳凰堂の中央の一対の鳳凰の尻尾が上を向いているのです。肉眼ではよくわかりませんが,ルーペを使えばわかります。
(5)私が小学生の頃,田舎の伯父から『昭和26年の十円玉は,表の鳥が雌鳥なのだよ。きっと値打ちが出るだろうから集めてみたらどうかね』と言われて集め始めたのがきっかけです。私は熱心なコインコレクターではありませんが,約30年間に百枚以上は集めました。
(6)ところが,収集を続けるうち,昭和27年の十円硬貨にも尻尾が上を向いているのがあったのです。しかし,ほとんどのものは尻尾が下向きです。また,昭和28年以降のは全て尻尾は下向きでした。
(7)しかし,なぜそうなのかは誰に聞いてもわかりません。皆,そんな事実さえ知らない人がほとんどです。大蔵省の造幣局に問い合わせてみればとも考えられますが,相手にされないような気がします。
(8)十円硬貨は,老若男女を問わず誰でもほぼ毎日手にするものです。そんな中に,希少価値となった(ギザジュー)が混在し,さらに,その中に鳳凰の尻尾が上向きのものが紛れているなんて,知る人ぞ知るロマンとは思いませんか?
(9)ということで,なぜ昭和26年の十円硬貨の鳳凰の尻尾が上向きなのかを調べて頂きたいのです。
(10)私のような隠れコレクターが日本中にいるせいでしょうか,現在ではほとんど昭和26年の十円硬貨は流通していないようです。年に一枚か二枚見つけられるかどうか,といった状態です。
もし,調査対象として採りあげて頂ける場合,現物が必要なのであればお貸し致します。
以上



果たして、投稿しても何の反応もありませんでした。

ああ、没だったんだろうなぁと思い、あきらめてしまいましたが、
およそ5ヶ月後のある日、フジテレビのめざまし調査隊の◎◎と名乗る女性から電話がかかってきました。
私は、投稿が採用され、上向きの尻尾の謎が解明されるならと思い、現物、すなわち昭和26年の十円硬貨を数枚、その◎◎と名乗る女性に送ることにしました。

そのときのやりとりが、以下の書式です。

前略

【調査隊】◎◎ 様
先日は何度もTEL頂き,お手数をおかけしました。早速,現物(十円硬貨)をお送りします。
ただし,郵便による現金書留だと,郵便局に出向くこと自体日数がかかりそうなので,職場発送の宅配便を利用させて頂きました。
これを機に詳しく調査して頂ければ幸いです。


(1)同封貨幣
①昭和26年十円硬貨 ←鳳凰の尻尾が上向き×3枚
②昭和27年十円硬貨 ←鳳凰の尻尾が上向き×3枚
③昭和27年十円硬貨 ←鳳凰の尻尾が下向き×3枚

(2)付 記
①小生が所持しているものは,おそらく30年くらい流通したものがほとんどで,それなりにかなり表面が磨耗しています。
②未使用品や新品同様のものをチェックするなら,巷の【〇△×コイン】とか,大手デパートの古銭コーナー等を取材されることをお勧めします。大手or有名なコインショップならいくつかストックしているはずです。
ちなみに,昭和26年や昭和33年の(未使用の)十円硬貨は,マニアの間では数万円で売買されているはずです。←流通していたものは数百円の価値しかない
※この手の話しは,(記念)切手ではよくあること(←ミスプリ・デザインミス等)で,コインショップの関係者ならもっと奥深いネタを提供してくれるかもしれません。
そういえば最近12Chの【鑑定団】でどこかの有名ショップの社長が一千万円くらいの記念切手とともにTV出演していましたよ。
③おそらく本件につきまだ半信半疑でしょうが,お送りした十円玉が人為的に削ったりしていないことは,ご自分の目で確認するかもしくは貨幣の専門家に鑑定してもらって下さい。3枚で足りないようなら,さらに10枚くらいお送りしても差し支えありません。
④尻尾の上向き・下向きの判別は,尻尾の先端の向きと尻尾の下側にくぼみがあるかないかでお願いします。
⑤造幣局に問い合わせたが…とのことでしたが,昭和26年当時の造幣スタッフorデザイン担当者等(←主にOB・OG)を探し出し,インタビューしてみる必要があると思います。
※本件に関しては,現役の若い役人は当然知らないでしょう。
⑥古い話しとはいえ,意図的でないのだとしたら,いわば造幣局のデザインミスということにもなりかねませんから,もしかしたらトボケているのかもしれませんよ。


果たして、私はまったく疑いもしませんでした。◎◎と名乗る女性から言われた住所は、

137-8088
港区台場2-4-8
 メディアタワー ??F
(調査隊)◎◎子

でした。

台場のメディアタワーと言われたら、フジテレビか!と思うのも無理はないでしょう?

しかし、その後、待てど暮らせど、何の連絡もありません。毎日、というか毎回必ず「めざまし調査隊」コーナーを録画して内容をチェックしましたが、10円玉に関する放送などありませんでした。

私はようやく、内心「やられたな」と思いました。

フジテレビ内のゴミ箱に捨てられた私の投稿を誰かが拾って、イタズラでTELしてきた…、なんてこともありうるわけです。
私は、あきれるというか、こちらから問い合わせしてもムダだなと思いました。
これが、新手のサギだとしても、やはり、被害額は少ないし特に事を荒げても大人気ないな…と今に至っています。

もっとも、今回こうやってWEB上に暴露してやったわけですが、もし万が一、何かの行き違いで…ということもありうるので、◎◎と名乗る女性の実名だけは伏せておくことにしました。メディアタワーの何階かも一応伏せておきます。

これがサギだとしたら、彼女はいずれ何らかの形で償わされることになるでしょう。

サギ師ではなく本当に「めざまし調査隊」のスタッフだったとしても、没なら没と、一言でも連絡くらいよこしてもよさそうなものです。
だいいち、昭和26年の10円玉は「提供したのではなく貸与しただけ」なのですから…。
(2009年9月12日)

(2014.10.6 一部訂正)
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