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心に残る医師の一言


題名からすると、こころ温まる話かな?と思われるかもしれませんが、ちょっと違います…。

「君の腰は一生治らないね…」

これは、私が高校1年のころ、ある整形外科の院長から言われた一言です。

詳しくは後述しますが、たとえどんな意図があるにせよ、医師たる者が「一生治らない…」なんて、前途洋洋?たる16歳の少年に対して言う言葉でしょうか?

医者とは、言わずと知れた「医療のエキスパート」です。つまり、医師の言葉は一般人のそれとは違って、相当の「重み」を持つはずです。

言った方は忘れてしまうのでしょうが、言われた方はショックが大きいだけに強く強く印象に残り、いつまでもいつまでも憶えているものなのです…。


今から30年以上も昔のことなので、詳しい経緯までは思い出せませんが、私が高1だった頃のある日のこと、HRだったか放課後だったか、教室の中でにわかに「卓球大会」が始まったのです。ちなみに、ピンポンではなく卓球のレベルでした。

昭和40年代後半はいわゆる卓球ブームで、県内屈指の進学高でさえ、腕に覚えのある者がクラスに何人もいました。つまり、相手が強豪?ぞろいなものですから、私はついつい本気でやってしまったのです。

私は中学校では卓球部に所属していましたが、高校に進学してからは卓球から遠ざかっていました。にわかに試合が始まったのですから、当然卓球シューズなど持ち合わせているはずもありません。
つるつる滑る、ワックスの効いた教室の床の上で、しかも、つっかけサンダル履きでの試合でした…。

「足元がおぼつかないな…」と感じるまま、試合に熱中してしまいましたが、無理な体勢からスマッシュを打ち込んだ瞬間、腰の骨が外れたんじやないだろうか!と思えるほどの激痛に襲われました。

果たして、私はそんなつまらないことで、16歳のみそらにして、いわゆる「ぎっくり腰」をやってしまったようです。

そんなわけで、まずは近場の接骨院へ行きました。低周波とマッサージ・冷湿布という治療で、数週間後ウソのように痛みから解放されました。

でも、完治したわけではなかったのです。

それから半年くらい後、体育の授業で「耐寒マラソン」というのがあり、その最中にまた激痛に襲われました。そうなると、今度は、もはや先般通った接骨院の治療では治らなくなってしまいました。

1ヶ月くらい通って激痛は治まったものの、(表現が難しいところですが)激痛と鈍痛の中間くらいの痛みが常時残るようになってしまいました。これは、存外かなりのストレスでした。

つまり、痛みを忘れていられるのは寝ている間だけで、朝起きてから就寝までずっと、腰から「痛い痛い」という信号が送られてくるのです。

果たして、その後、私はいろいろな治療院を試すことになります。

整骨院・接骨院、どこへ行っても治療方法に大差はありませんでした。低周波と湿布、赤外線照射、牽引もやりました。しかしどこも対症療法だけで、根本治療には至りませんでした。

高2になってからは、誰かの紹介で「鍼治療」も試しました。

当時の学校は、土曜日は半ドンでしたので、毎週土曜日の放課後に市内の鍼灸院に通ったのです。その鍼灸院は学校の帰り道とは反対方向にあり、学校から歩いて20分くらいのところにありました。

この鍼治療ですが、治療中と治療直後は確かに痛みが和らぐのですが、動き(歩き)始めるとほとんど「元の木阿弥」でした。
高校時代、私は電車通いでしたが鍼灸院から駅までは、やはり歩いて20分くらいかかりました。つまり、鍼灸院から歩いて駅まで行き、さらに家に帰り着くころにはもとの痛みに戻ってしまうというわけです。

また、昭和50年頃の鍼治療は1時間の治療費がちょうど千円でした。ちなみに当時はまだ消費税もなく、お札も「伊藤博文」でした。
私は毎週土曜日、つまり月に4回その鍼灸院に通いましたが、鍼治療は保険も利かないし月に4千円もの負担を親にかけるのは、かなりの後ろめたさがありました。

結局、実質あまり効果もなかったし、半年もしないうちに鍼治療はやめてしまいました。

その後、鍼治療に見切りをつけてからしばらくして、私は、小さな接骨院よりも多少大きな病院なら…という淡い期待をもって、市内の有名な?整形外科を訪ねました。当時、割と流行っていた整形外科でした。

でも、結局そこも小さな接骨院と同じようなもので、レントゲンを撮り、低周波と牽引だけという治療でした。特にマッサージをするでもなく、湿布薬も何回かおきに帰り際、医局から渡されるだけでした。自分で貼ってくれ…ということなのでしょう。

私は、

「なんだか、小さな接骨院の方がむしろ親身に治療してくれるみたいだなぁ」と思いました。

そう思うとおり、何度か通ってもいっこうに良くはなりませんでした。

それどころか…、その整形外科に通い始めて1ヶ月ほどたった頃、当時の院長(30歳台?)が、

「君の腰は一生治らないね…、手術すれば治るかもしれないが…」と言ったのです。

私は唖然としました。

「それを治すのがおまえらの仕事だろう?こいつはヤブか?!」私は思いました。

院長は続けて、

「でも、手術で完治するとは限らないんですよ。手術するにはそれなりの覚悟と、その後の努力(リハビリ)が必要になりますが、やってみますか?」

昔から、腰痛の手術は「失敗すれば車椅子…」などと、誰からともなく聞かされていました。
実際どういった手術をするのか知りもせず、私は、

「嗚呼、手術だけはやりたくない…」と思いました。

医者からの帰り道、私は、ひどく落ち込みました。

「一生…治らない…??もしかしたら本当にそうなんだろうか…」

そう言った相手は、苟しくも医師でした…。確かに、1年近くあちこちの治療院に通っても、治らないでいたのですから…。
果たして、私は、それを機にその整形外科に行くのを止めました。

「君の腰は一生治らないね…」その言葉だけが、ずっと脳裏に焼きついたまま離れませんでした。何かしら掴みどころのない絶望感や厭世感・やるせなさのようなものが、常に私につきまとうようになりました…。

それから、おおよそ20年が過ぎました。ここでは詳しくは省きますが、その間いろいろと思わしくないことも多々ありました。

バイクで転倒してガードレールに背中を打ちつけたり、重量物を運ぶバイトで背中を痛めたり、毎週のように徹夜マージャンをして坐骨神経痛になったり…。

しかしいずれの場合も、特に医者には行かず自然に治るのを待ちました。というか、売薬で湿布したり、ぶら下がり健康器を使ってみたり、ツボ療法・腰痛体操、などなどあらゆることを自分自身で試したわけです。

なお、腰痛に耐えていくには腹筋や背筋を鍛えるしかないだろう…と思い、20代後半にはテニスとスキーを始め、30歳を過ぎてからはゴルフを始めました。

しかし、いずれにしても、常に腰痛再発・悪化の不安は拭いきれませんでした。ちょっと無理をすると、激痛ではないものの、腰のあたり全体が固まってしまったように痛くなることがたびたびありました。

つまり、常に腰に不安はあったものの、急に歩けなくなるなどの支障はなく、いつしか私自身、

「一生このままなのかな…」と思うようになっていきました。

しかし平成7年ころ、つまり高1のときに腰痛に襲われてからおおよそ20年後に、劇的な「変化」が訪れたのです。

その頃テニスで知り合いになったE氏が、私とほぼ同じ時期にゴルフを始めたのです。そのため、練習場で出くわすこともしばしばあり、そのうち、連れ立って練習場に通うようになりました。

いろいろな話をするようになって判ったのですが、そのE氏は実は「腰痛もち」だったのです。聞くところによると、E氏はテニスで腰を痛めたことがあり、ゴルフでさらに「傷を深めた」ようでした。

そのE氏がある日、私にこう言いました。

「知り合いの紹介で船橋の整体療院に行ったら、腰の痛いのが治ったんですよ!」

聞くところによると、E氏の行った整体とは、いわゆる「荒療治の整体」でした。

「いや~、痛みは痛みで制す!ってな感じでね。腰だけじゃなくて身体中ぐいぐい押されるもんだから、あちこち痛いんですよ。あれって、揉み返し…って言うんだろうかねえ。でも2~3日過ぎると、押された痛みが消えて、肝心の腰の痛みも消えてる!というわけなんですよ。」

「へえ?それって、もしかしたらテレビでよく見かけるようなヤツですかぁ?クビをガキっとひねったり、身体のあちこちを木の棒で叩いたり…」

「いや、僕が行ったところは道具は使ってなかったな。確かにクビはひねるけど、あとは先生の膝とか肘で、患部というか、身体中のツボとか骨をぐいぐい押すみたいだね。みたいだね…ってのは、施術中は自分じゃ見えないからなんですよ。ていうか、他人が施術されてるのは、とても怖くて見てられないんだけどね…」

私は、それを聞いてちょっと…、いや、かなり尻込みしました。「痛い」と「怖い」という2つのキーワード!

E氏はさらに続けて、

「整体なんて、おじさんの患者ばかりだろうと思ってたんだけど、なぜか女の人も来てるんだよねえ。しかもおばさんだけじゃなく若い娘もいるし、小学生やら中学生も来てる。どうも詳しくは聞いてないけど、婦人病やらいろいろ整体で治せるらしい…よ。まあ、それはともかく、僕はほとんど歩けない状態で行ったんだけど、終わってからはふつうに歩いて帰って来たよ。ただ、あちこち押される痛みで、泣きそうになったね…。」

私は、そんなことを聞かされても半信半疑でした。というか、

「整形外科がお手上げしたものを、そんな、いとも簡単に治せるものだろうか?しかも、痛い?」

果たして私は、

「整体を試してみようか」と思いつつも、結局それから1年以上も無碍に過ごしてしまいました。

正直なところ、

「まぁ、どうせ……だし…、今のままで…いいか…」という感じだったのです。

しかし、これも巡り合わせだったのか…、それからさらに1年以上も過ぎたある日のこと、E氏が、

「また、腰やっちゃったよ…。来週、例の整体療院に行くんだけど、一緒にどうですか?」と言ってきたのです。

なぜか私は、そのときは「だめもと」で今度こそ行ってみよう、という気になりました。何か、眼に見えないものに「背中を押された」ような気がしたから…です。

私が初めてその整体療院に行ったのは2月のある日でした。

予備知識が災いしてか、不安でいっぱいで、前夜はほとんど眠れませんでした。当日というか前日から千葉にしてはめずらしく、ドカ雪?が降りました。

その日は整体療院までE氏のクルマに便乗させてもらうてはずになっていたので、朝一番でE氏の家までクルマで向かいました。不意の雪だったので、かなり慎重に走っていたつもりでしたが、駅前の狭い道路が凍結していたのに気付かず、20m近くも滑ってしまったのです。

その道路は、駅前を過ぎて50mほど行くとちょっと広めの道路にT字路で交差していました。そこには信号はなく、広めの道路はその先にある信号のせいで、よく信号待ちの列ができる場所でした。

私はそのときまで、ずっと気づかずにいたのですが、T字路の手前あたりは緩い下り坂になっていたのです。しかも、そのあたりは建物で日陰になっていたため道路が凍結していたのです。

その頃私は、スウェーデン製のFF車に乗っていました。タイヤは4輪ロックしましたが、まったく横滑りすることはなく、まっすぐ前を向いたまま…なすすべもなく、T字路に向って滑って行きました。

交差する道路には、やはり信号待ちの列が出来ていましたが、

「ああ、やっちまったかーっ」と、観念しかかったとき、信号待ちしていたクルマの列がおもむろに動き出したのです!しかも、ちょうどT字路のあたりが、クルマ2台分くらい空いたのです!

私のクルマがT字路に差しかかってきたのを見た後続のクルマが、割り込みさせてくれたのか?はたまた、前のクルマが動き出したのに気づかず、もたついてすぐに発進しなかっただけなのか? いずれにせよ…、とにかく、奇跡的に?私のクルマが「割れ込めるスペース」が、空いたのです。

私のクルマは、ごく当たり前のように「その空いたスペース」に、吸い込まれるように収まりました。広い方の道路は交通量も多く、凍結してはいませんでした。気がつけば、タイヤもグリップを再開していました…。

こうして私は、間一髪で接触事故から免れることができました。しかし私は、ほっとしたのと同時に、身体が震え出し、アタマもガンガン痛み始めました…。

「こりゃ、やばいか……」などと、内心くじけそうにもなりましたが…、それでも、

「何としても整体に行かなきゃ」と思いなおし、E氏の家へ向ったのでした。

私は、E氏にはそれ(直前の出来事)は話さず、何食わぬ顔でE氏のクルマに乗り込みました。ドライバー役のE氏にあらぬ不安を与えるわけにはいかないと思ったからです。

なんせ、船橋の整体療院までは40キロ近くもあるのです。おまけにあちこち雪だらけだし、実際、道路状況は混乱していました。案の定、予約した時刻には全然間に合わず、1時間半遅れで整体療院に到着しました。

連れて行かれた整体療院は、果たして、私が想像していたようなところではありませんでした。ごくふつうの民家を改造して自宅と療院を兼ねているらしく、1階の一部が施術室と待合室になっていました。

施術室は八畳あるかないかの広さで、診察というか施術用のベッドが2台離れて並んでいました。2台のベッドの間はカーテンでしきってあります。

それ以外には、カルテを収納する棚と電話・FAX・パソコンがあるくらいで、レントゲンとか薬棚といったものは何もありませんでした。

待合室は施術室のすぐ隣にあり、ベンチシートが1つ置いてるだけで、せいぜい4人くらいしか座れません。もっとも、そこは1時間刻みの「完全予約制」なので、そのキャパで充分なのでしょう。

整体師の先生はがっちりした体型で、一言で言えば、まるで「熊」のような印象でした。

予約した時刻から1時間以上も遅れて行ったにもかかわらず、「熊先生」は嫌な顔ひとつせず、

「突然の雪で大変でしたね、よく来ましたね」と言いました。

私は、依然不安でいっぱいでしたが、E氏が先に施術を受けることになりました。果たして、ベンチシートのすぐ隣の施術室から、E氏の押し殺すような悲鳴が断続的に聞こえてきました。

私は、

「せっかく来たからには…」と、E氏の悲鳴を気にしないようにして、順番を待つことにしました。

30~40分ほど待って、私の順番が来ました。

整体といっても、いきなり身体中を押したり引っ張ったりということはありませんでした。まずは、補助というか弟子といった感じの人から全身マッサージを受けました。
つまり、指先からつま先まで全ての関節を柔らかくして…、といった感じでした。

私は内心、

「E氏はほとんどいきなりグイグイやり始めたのに、ずいぶん扱いが違うよなぁ。これじゃ、ただのマッサージだよ…」と思い始めました。

しかし、真打登場というか、熊先生に代わってから180度、いや360度くらい状況が変わりました。

「どこが良くないんですか?」熊先生は、腹ばいにさせられた私の腰のあたりを、さっきの弟子の10倍くらいの力でグイグイ押しながら尋ねてきました。

私は、おおよそ20年間ずっと腰痛を引きずってきたこと、腰を痛める少し前に首の鞭打ち症も患っていること、やはり20年くらい前に背中も痛めていること…などなど、思い出す限り答えました。

さて、熊先生は背中側から押してくるので、どういうふうに押してるのかは見えません。ただ、さんざん脅かされていたほどの痛さではありませんでした。最初のうちは…。

しかし、ここぞという場所では信じられないくらいの強さで一気に押され、さすがに私も思わず唸り声をあげました。それが、腰の周りで何箇所もありました。

熊先生はそのたびに「むうっ」とか「えいっ」とか気合を入れながら、渾身の力で曲がった骨を矯正しているようでした。

さらに私は正座させられ、両手を前に突き出してベッドに両手をつくよう言われました。そしてさらに背中側からゴリゴリと腰を押されました。そのときも飛び上がるほどの痛みでした。

まさに、歯をくいしばって…という感じで、押される痛みをこらえました。

グイグイ押されるだけでも痛いのに、さらに、これでもかっ!これでもかっ!というぐあいに、熊先生は骨を押してきます。

そうして、何度か「むうっ」という掛け声がして、

「よしっ!終わり!」と叫び?ました。

「どうですか?腰の痛みは?とれましたか?」と言われても、押されたばかりの痛みで、もともと抱えていた「腰痛の鈍痛」がどうのこうのなんて、わかるはずがありません。

それで、私は正直に、

「はぁ…、押された場所が痛すぎて、まだよくわかりません…」

熊先生は、私の返事を無視するように、

「腰の左側がガタガタだったね。よく、こんなんで20年も生活していてきたもんだね…」と言いました。

それから、首の周りです。

熊先生は、私の首というか頭を片腕で抱え込むようにして、頚椎の骨の位置を確かめるようにぐいぐいとひねっていました。が、おもむろに、

「ちょっと、首の力を抜いてください」と言いました。

私は、言われるままに、心持ち首周りの力を抜きました。

そうしたら…、次の瞬間、私の首は左斜め45度?くらいの角度で上に引っ張り上げられていました。

そのとき、バキバキバキっ、というより、ビリビリっというような音が聞こえました。それは、あっと言う間もないほどの速さでした。

さらにまた次の瞬間には、右斜めに、同じように引っ張り上げられ、これまた同じような音が首のうしろあたりから聞こえてきました。

それは…、首の骨が折れるんじゃないだろうか?といった巷の下馬評とは裏腹に、引っ張られたあと、すうっとして「首から憑き物が離れて行った…」かのような、すがすがしさのようなものがありました!

熊先生、

「いい音がしたね!今日は、来てよかったね。頚椎が指2本分くらいズレてたよ!」

さらに、

「なんで、もっと早く来なかったの?」と言いました。

これは、いちいち説明するまでもありませんが、予約の時間に遅れて来たことなどではなく、あちこち身体の痛みを約20年間も諦念していたこと、さらにおおよそ1年間も来院を逡巡していたこと…、に対して言った言葉でした。

整体師、つまり熊先生は、盲目の鍼灸師と同じく、指先の感覚だけでどこの骨がどうなっている、こうなっている、というのがわかるらしく、私の背骨をずっとなぞって行き、私が話していない症状を次から次へと言い当てました。

君は眼が疲れやすいだろう?とか、胃腸が弱いだろう?とか、風邪を引きやすいのでは?などなど、びっくりさせられるくらい言い当てては、次から次へと背骨を矯正して行きました。

そして、約20年前に背中を痛めたあたりでは、

「どうやったら、こんなふうになるんだろうね?」と言いながら、また、グイグイと背骨を押し込みました。

私はふたたび、こらえきれず悲鳴を上げました…。

熊先生曰く、

「悪いところは押すと痛みます。悪くないところは強く押しても痛くないはずですよ」と言いながら、あちこち背骨の左右・両側を押しました。

私は、生活習慣からか身体の左側が歪む傾向にあるらしく、反対側、つまり右側をあちこち押しても全然痛くはありませんでした。でも左側を押されると、ふだん痛まない場所もかなりの痛みを感じました。

そして、私は仰向けにされ、脚の力を抜いてつま先を揃えるよう言われました。両方の脚を交互にひねったり、引っ張られたりしましたが、これはさほど痛くはありませんでした。

「脚の長さは3センチくらいはズレてたね。脚の長さが違えば当然身体は歪んでくるよ」

熊先生は、さらに、

「今日は、ここへ来て本当に良かったね!痛みは痛みを以って制す、ですよ。念のため、半年ごとにいらっしゃい」 そう言って、笑いました。

こうして、1時間を超える荒療治の施術が終わり、E氏と私は、「ふうーっ」とため息をつくようにして家路に着いたのでした。

その夜…、家に帰ってからもずっと背中や腰の周りには押された痛みがありましたが、就寝してみると、背中から腰の周りにかけては「まるで背中から腰にかけて血がかけめぐっている!」ような感じでした。

でも、それはまったく不快な感覚ではなく、今までずっと眠っていた白血球や赤血球たちが一斉に活動を開始した、というような感覚でした。

そして…、2~3日が過ぎて、身体中を押された痛みが消えてくると、不思議なことに腰が痛くなくなっていることに気付きました。

歩いても、走ってもまったく痛くないのです。腹ばいになっても痛くありません!

「ええっ?ホントかよ!」 そのときの私の感激は、筆舌に尽くしがたいものでした!

どこの病院に行っても、いろんな治療をしても、薬を飲んでも、貼っても、まったく治らなかった腰痛が…、まるでうそのように消えていたのですから。

私は、あらためて、

「整体って、すごい…な」そう思いました。

しかし…、それからおおよそ1週間後のある日のこと…。

当時私が勤めていた会社では「テニスと卓球のあいの子」のような球技が盛んでした。

すなわち、会社敷地内の舗装された通路に、卓球台をふたまわり大きくしたくらいの広さで白線が引いてあり、軟式テニスの球を木板で作ったラケットで打ち合うというものでした。

その球技は、昼休みとか夕刻の15分間の休憩時間に、各職場から三々五々職員が集まってきて試合が始まるのですが、私も、その三々五々の中のひとりでした。

私は、それまでとは違って腰の痛みがなくなったこともあり、ついつい羽目をはずして試合に熱中しすぎてしまったのです。卓球ほどの速さはないものの、「ミニテニス」といった感じで、結構速く動き回る必要がありました。

果たして、試合中激しく動き回っている最中に…、不意に腰に痛みが襲ってきました。激痛ではないものの、決して鈍痛ではありませんでした。

「ええっ、治ったはずなのに…??」

なんだか、腰椎のあたりに「押しボタン」のようなものがあって、そのボタンが飛び出してきたような感覚でした。

今度は、ためらうことなく即、熊先生に電話を入れました。

数日後、私は1人で熊先生の療院を訪ね、腰痛の再発?したあたりを治してもらいました。

今度は逆に、押しボタンを押し込まれるような感覚があって、痛みはウソのように消え去りました。

私は、

「まだ矯正した骨が定着していないのだろう」などと勝手に?判断し、それからは自分なりに気をつけるようにしました。

果たしてそれ以来、同じような再発?を繰り返すことはなくなりました。

熊先生のおかげで、忌まわしい腰痛から救われてから、なんだかんだと、もう15年くらい過ぎました。
もはやずっと、「元の木阿弥」に戻ることはありません。

たまに、腰が痛くなることはあっても、それは骨の痛みというより腰周りの筋肉が痛む場合がほとんどのようです。つまり、腰が痛くなっても、冷やさず、逆に暖めるようにして安静にしていれば数日で自然と治ってしまいます。

熊先生からは、「半年に1度おいで」と言われていますが、おおよそ2年おきくらいで整体に行く機会が訪れます。でも、それはだいたいクビ廻りの不調で行くのがほとんどで、ついで?に腰を診てもらうと、

「大丈夫のようですね」と診断されるわけです。

初めて整体療院に行った日、熊先生は、

「なんで、もっと早く来なかったの?」と言いました。

私も、

「なんで、もっと早く行かなかったんだろう?」つくづくそう思いました。

理由はただひとつ。私が「整体治療」というものを知らなかったからです。

我々は、子供から大人に成長するにつれ、さまざまなことを親や周囲から学びます。特に、病気や怪我をしたら真っ先に「医者か病院」へ、と考えるのがふつうだと思います。

親も周りの人もそうやって成長してきているから当然でしょう。
つまり、病気や怪我の際は、まず最初に「西洋医学」に頼ろうと考えるものなのです。

でも、いきなり「東洋医学」を思いつく人は滅多にいないのではないでしょうか?
それもそのはず、ふつうの人は東洋医学についての認識が少ないか、ほとんどない…と言っても過言ではないからです。

すなわち、西洋医学に比べて東洋医学は、いつの間にか「知る人ぞ知る」というポジションに追いやられてしまっているような気さえします。

ちなみに、30年前私に「君の腰は一生治らないね」と言った整形外科ですが、なぜ私にそんなことを言ったのでしょう?

今となっては、憶測に過ぎませんが、その病院、というかその院長は、理学療法にはあまり熱意はなく「検査~理学療法~手術~リハビリ」といったコンセプトで、病院を経営していたのだろうと思います。実際、その整形外科は、リハビリ施設・リハビリ体制が充実しているようです。

そこは、「そういった治療」を望む患者にとっては「とても有難い病院」なのでしょう。しかし、手術など望まない患者にとっては、ずいぶん迷惑な話です。

さしたる治療もせず、手っ取り早く手術を勧めてリハビリコースへ送り込む。完治するかしないかは患者の努力次第…。これでは、ある意味、「医療にかこつけた商売」ではありませんか?!

ともすれば、私は30年前、その院長の「商売」のカモにされるところだったのかもしれないのです。

なお、私は、ずっとその病院を敬遠し続けてきましたが、数年前、膝が不調になったときに一度だけ受診してみたことがあります。30年以上も過ぎているし、担当医師も代わっているだろうと思ったからです。

しかし奇しくも、担当した医師は、例の院長その人でした。私はその院長のことをよく憶えていましたが、その院長は私のことなど覚えているはずもありません。

膝のレントゲンを撮ってから、院長曰く、

「レントゲンで見る限りは、異常はないようですね。MRIでもやってみますか?」と来ました。

私は、

「なるほど…、やっぱりね…」と思いながら、それには答えずいましたが、脇に控えていた婦長らしき人が話しに割り込んできました。

「それでは、MRIの予約ですが、いつになさいますか?」と、まるでそれが当たり前のように勝手に話を進めようとします。

私は、風の噂で、「最近あの病院は、やたらMRIを使いたがる。できるだけMRIを稼動させて償却費を稼ごうとしてるんじゃないか?」という話を耳にしていました。

私は、婦長の尊大な口ぶりを聞いて、にわかに腹が立って来ました。

「ちょっと、待ってくださいよ、MRIを頼む気などありませんから!」私は、そう言って断りました。

果たして、医療機器の進歩とともに、検査手段がレントゲンからMRIに替わっただけのようです。MRIが終わったあとは、十中八九、いや九分九厘は「手術」を勧めてくるでしょう…。

私は、やはり、それっきりその病院とは縁を切りました。

私は、別に西洋医学を否定するわけではありません。西洋医学でしか為しえない領域もあると思います。しかし、東洋医学そっちのけで西洋医学絶対主義というのも考えものだと思います。

人間は「十人十色」と言われるように、腰痛の原因や症状もまた十人十色だと思います。だとすれば、その治療方法もまた然り、どんな療法が最善なのか、一概には言えないでしょう。

ちょっと思い浮かべただけでも、いろいろな治療法があります。手術をはじめ、神経ブロック注射、カイロプラクティック、中国整体、タイ古式療法、鍼灸、スパイラルテーピング、水中歩行? などなど、枚挙に暇がありません。

とはいえ、私は自分の実体験をもとに、腰痛で悩む人にはまず「整体」を勧めることにしています。間違っても、「君の腰は一生治らないね…」なんてことを軽々しく言うような医者を勧めたりはしません。

医者に勧められるままに「手術」をされるのも個々の自由です…。ですが、手術をするというのは、素人が考えてさえ、相当の勇気と相応の覚悟、予後に待っている「リハビリ」に対する心構えが必要なはず…です。

そんな…、西洋医学の「手術」を決断するだけの勇気があるなら…、その前に、東洋医学、すなわち「整体治療」を一度試してみては?と思うのです。

もし、整体療法が自分にとって最善の治療法だったとしたら…、私のように「手術」をすることなく「治る」可能性もあるのです。

しかし、この整体治療ですが…、整体師もまた人間です。技術のレベルがみな同じはずはありません。

よく巷で言われるように、運悪く下手な整体師に出遭うと、治るどころか余計悪くなってしまうかもしれません。もっとも、それは西洋医学の医師とてまったく同じことが言えると思いますが…。

千葉県を始め、おそらく全国各地に「整体師協会」なる団体があると思います。この団体に所属している療院の整体師なら技術面では大丈夫…、とは思います。ただし、真の意味での「良い整体師」に出逢えるかどうかは、各自の「日頃の行ない次第」かもしれません…。

治療費は、初診料込みで8,400円ですが、あまり期間を空けなければ、再診は5,250円です。これは、整体師協会に所属していれば「一律料金」のはずです。もしそれより高かったり、逆に安かったりすれば、その療院は協会に属していない…という証明だと思います。ご留意を…。

※ただし、「整体師協会に所属してないから良くない」ということではありませんので念のため。
逆に、「整体師協会に所属してさえいれば良い」ということでもないので、誤解のないように…。

(2010年3月1日)
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