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傘鉾パート2

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言ってはいけない一言


その昔…、かなり昔の話ですが、私が高校1年の頃のことです。

私の(入学した)高校の、地理Aの担当教師は、K先生という人でした。

K先生は、当時30年配で背は低め、アタマのてっぺんから声が出てるんじゃないだろうかと思えるほど甲高い声の人でした。

そのK先生は、初めての地理の授業の日、自己紹介がてら、こんなことを言いました。

えー、みなさん、これから一緒に地理の勉強をしていきますが、僕が常日頃気をつけている『言ってはいけない一言』というのがあるのでお話します。

それは、『君、まだまだ青いね』 という一言です。

我々には知らないことが多すぎます。また、知らないからこそ学ばなければならないのですが、誰でも最初は、何も知らないところからスタートします。

何も知らないところから少しずつ学んで、積み重ねて行くのが 「勉強」 なんですよ。

つまり、知識の多い少ないは、年齢や経験(勉強)の有無で違ってくるものなんです。

学問(勉強)に終わりはありません。産まれてから死ぬまでが勉強の積み重ねなんですよ。

だから、安易に、他人に向かって「知識の浅さ」を批判するようなことを言ってはダメです。

もし、僕が授業中にそんな言葉を口にしたら、すぐに言ってくださいね。改めますのでね…


このときのK先生の自己紹介は、妙に印象深いものでした。

でも、『言ってはいけない一言』と言われても、あまり実感としては掴みどころがなかったのです。

『君、まだまだ青いね』という言いまわしは、年長者が年下の相手に向かって、相手の(知識の浅さを)嘲って言うときの言葉なのだろうと思います。

でも、その頃私はまだ高校生だったし、『君、まだまだ青いね』という言いまわしは、むしろ仲間内で相手を揶揄(やゆ)する程度の意味合いなのでは?と思っていました。

実際、私はそれまでそんな嘲り(あざけり)を受けたことはなかったし、ついぞ学生時代はそんな言葉を言われることはありませんでした。



それから約10年後、私も一端(いっぱし)の社会人となっていました。

たまたま私が就いた仕事は、いわゆる「バイヤー」の仕事で、おおよそ5年のサイクルで違う仕事内容(他部門)へのローテーションがありました。

私は、会社のカネとはいえ年間20億近い「買い物」をしていました。

つまり、大金を動かす以上、会社の仕組みとして各バイヤーと特定業者との癒着を防止するため、定期的にローテーションを組んでいたものと思われます。

それはさておき、私は入社10年目くらいで、例に違わず(たがわず)担当部門の変更を命ぜられました。

ところが、異動した先の部門業務は、それまでの約10年間に渡るスキルがあまり役に立たないところ(業務内容)でした。

そのため私は、ほとんど1年生に逆戻りしたような感じで、知らないことだらけで、いろいろと周りの人に質問する機会が多くなりました。

社会人たる以上、知らないことは(知っている人に)どんどん聞いて、自分の知識を増やしていくしかありませんでした。 

「聞くは一時の恥、聞かぬは末代の恥」というわけです。

私は、それはそれで「正しい理屈」だと信じていました。

周りのベテランたちも、(新入生に対して)いろいろ親切に教えてくれました。

でも、そんな中、検査部門の主任クラスで、私といくつも歳が違わない奴に未知のことを尋ねたとき、「おまえ、そんなことも知らないのか?」と、吐き捨てるように言われたのです。

私は、正直愕然としました。同世代の輩(やから)から「おまえ」呼ばわりされたうえ、「そんなことも知らないのか?」という言い回し…。

「知らないから聞いてんだよ!」、喉元まで出かかりましたが…、都合こらえました。

映画の「寅さん」じゃありませんが、「それを言っちゃーおしめーよっ!」と思いました。

いくら仕事とはいえ、言っていいことと悪いことがあります。

「君、まだまだ青いね」なら、まだ揶揄っぽい「逃げ道」のようなものがありますが、「そんなことも知らないのか?」ともなると、相手の無知さを完全否定するばかりか、侮辱にも値する言葉でしょう。



私は、「あぁ、K先生が言ってたのは、このことだったんだ…」と思いました。

おそらく、K先生は、かつて「君、まだまだ青いね」と言われた経験があったのでしょう。

そして、それはK先生にとっては決して「揶揄」ではなく、「そんなことも知らないのか?」同様、「侮辱に値する言葉」だったのでしょう。

それゆえ、K先生自身、「自分だけは、そんな他人を傷つけるような言葉を軽々しく口にしまい」と肝に銘じていたのだと思うのです。

実際、高校1年のとき地理Aの授業で、K先生の口から『君、まだまだ青いね』などという言葉は一度も発せられませんでした。




話を戻しますが、何事も、最初は誰でも「1年生」なのです。

1年生から始まって、2年生、3年生と成長していくものですが、人は十人十色です。中には何年たっても2年生になれない人や、逆に、いきなり3年生、4年生並みに成長する人もいます。

すなわち、部下(配下)がいる人は、常にそういうことを念頭においたうえで、相手と会話をしなければなりません。

つまり、間違っても、「そんなことも知らないのか?」などということは言ってはならないのです。

その時点で、(何かを)教えていなかったから、または、教わる機会がなかったから「知らなかった」だけかもしれないのですから…。

にもかかわらず、感情に任せて、何かのはずみで、部下に対して「そんなことも知らないのか?」などと言ってしまったら、十中八九、(部下からの)信頼を失うことになるでしょう。

子供に対しても同様です。

折にふれ、自分の子供に向かってそんなことを言っていたら、おそらく子供は「親嫌いの人格」に成長してしまうでしょう。

誰でも最初は「無知」なのです。

たまたま、相手の知らないことを知っていたとしても、自分(の博識)を基準に相手を見下すようでは、井の中の蛙(かわず)、つまり私は愚か者ですと自ら宣言しているようなものです。
実際、どんなに博識でも、「上には上」がいるものです。

身に覚えのある方、今からでも遅くはありません。今後、改めて気をつければよいのです。


(2010年8月9日)
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